子宮頸がんワクチン(以下HPVワクチン)は小学校6年生の4月~高校1年生の3月の女子が定期接種対象です。高校1年生の3月までであれば今でも無料で受けられます。
接種は計3回の筋肉注射になります。2回目は1回目の接種から2か月あけて、3回目は2回目の接種から4か月あけての接種が標準です。ですが、2回目を1か月あけて、3回目を2回目から3か月打つことも可能ですので、1回目を高校1年生の11月29日までに接種できれば3回とも無料で受けられることになります。
高校2年生からは任意接種(1回15000円税込み)となります。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルスに感染した方が数年~十数年経って癌化していく疾患です。ヒトパピローマウイルスは性感染症ですが、子供を持つ女性の約半数は一度は感染するほど一般的なものです。多くの人は治癒しますが、年間11000人ほどの方が癌になり、2800人ほどの方が残念ながら亡くなります。そしてその多くが20‐40歳台の若い女性であるということです。また日本における若い女性の子宮頸癌の健診率は低く、妊娠されたときに見つかるケースも少なくありません。
日本ではHPVワクチンが実質ストップしており(実際は定期接種のまま残っています)、子宮頸がんの患者さんは毎年徐々に増えてきております。ヒトパピローマウイルスにも多くの型があり、約2/3を占める16型と18型を予防できるのが今の日本のHPVワクチンとなります。海外では感染を9割予防できるワクチン(ガーダシル9)もすでに使用されております。
ただしHPVワクチンは接種後の副作用のことが接種開始直後から問題視されました。これまでに日本で接種された方は約338万人おられ、すべての副反応疑いは報告で2584人(約0.08%)でした。多くの方は軽快または治癒し、症状が残る方は186人(約0.005%)です。
残る症状としては、頭痛66名、倦怠感58名、関節痛49名、接種部位以外の疼痛42名、筋肉痛35名、筋力低下34名です。(複数の症状も含む)
特にHPVワクチン接種後の広範な疼痛や運動障害を中心とする多様な症状を呈する方がおられました。この症状のことを複合性局所疼痛症候群(CRPS)と呼びます。ただし、HPVワクチン接種歴のない人でも同様の症状を示す方が一定数おられることはわかっておりました。名古屋市における女性7万人を対象とした疫学研究ではHPVワクチン接種群の発症頻度は非接種群と比較して増えるという結果は認められませんでした。欧州の研究結果でも因果関係は否定されております。
ワクチンによる疼痛刺激や不安、ニュースなどで目から入る情報のために多少CRPSが増える可能性は残りますが、統計学的(医学的)には誤差範囲でHPVワクチンとの強い関連はないということになります。
当院では16型と18型以外に性病である尖圭コンジローマの原因の9割を占めるHPV6型と11型も予防できる4価のワクチンを使用しております。
なお、日本産婦人科医会、日本産婦人科学会、日本小児科学会も接種を推奨しており、それぞれのHPにも詳細なデータが載っております。よろしければ一度ご一読ください。またご質問がある方は当院までお問い合わせください。
追記 海外で使用されているガーダシル9(9種類予防できるHPVワクチン)が日本でも承認されました。ただいつ定期接種に組み込まれるかどうかはまだわかりません。高校1年生の方は今のガーダシルを接種されるのがよいかと思いますが、中学生の方は高校1年生まで待ってもよいかもしれません。