2022年8月に小児科学会は接種に対して「意義がある→推奨する」としました。2022年9月からは保護者の方に努力義務が課せられます。
これまで新型コロナウイルスワクチン(5歳~11歳)の努力義務が課せられなかったのは、第5波までは小児の感染が少なかったこと、無症状の方が多かったことがあげられます。
しかし、第6波以降、小児でも感染する方が増加し、第7波では感染流行の中心になるほど増加しています。
重症化率、致死率は低いものの、感染者が増えれば亡くなるお子様もでてきます。
米国では1000人以上の小児が死亡しており、うち200人以上は小児多系統炎症性症候群(川崎病様の症状)で死亡しております。
日本では新型コロナウイルスによってすでに26名(うち23名がオミクロン株)の小児が死亡しております。これらの主な原因として心筋炎や脳炎、突然死など、軽症から急に悪化するものが中心です。
米国と比較して死亡者数が少ない理由としては、医療機関にかかりやすい事などもあげられますが、感染者数の差が大きくかかわっています。(米国では国民の60%以上が感染、日本では7%程度)このまま感染者数が10倍になると死亡者数も10倍程度(200ー300人)になることは想定されます。
現在の5ー11歳のワクチンによるオミクロン株に対する感染予防効果は20~50%、発症予防効果は28~60%(デルタ株では90%でした)、入院予防効果は68~80%と示されております。小児多系統炎症性症候群に関しては約90%予防できることも示されております。
安全性に関してですが、7月10日までに1回目140万回、2回目130万回、日本で接種されております。
このうち心筋炎または心膜炎と評価された件数は1回目2件、2回目0件でした。死亡として報告された事例は2回目接種後の1件でした。
発熱などの副反応は1回目7.9%、2回目13.4%程度で、若い成人と比べるとかなり少なくなっております。これはワクチンに含有されるmRNA量が成人量の1/3であることが主な要因と考えられます。肩の痛みに関しては少しはありますが、腕が上がらないほどの痛みを訴える児童はほとんどおられません。
mRNAはたしかに体内で蛋白を産生する情報を含んでいますが、私たちのDNAを変化させることはできません。(風邪のウイルスの多くがRNAウイルスですので、風邪にかかっても私たちの遺伝情報が変わらないことと同じです。また10年、20年後に何かあることもまずありません。風邪が原因で20年後に不妊になることは考えにくい。)
またmRNAは数日で分解されてなくなりますので、10年後の影響はほぼ皆無でしょう。
とはいえ、ワクチンを接種していても海外のようにマスクを外す生活をすれば、おそらくいつかは感染はするでしょう。(コロナウイルスが世界中から無くなれば話は変わりますが。。数年でコロナウイルスがなくなる可能性は低いでしょう。実際にずっと残っている風邪のコロナウイルスが4種類あるわけです。)
ただし2回、3回と複数回感染する方はほとんどが未接種の方になります。「ワクチン+感染」が現在最もその後の感染予防効果が高いのです。
まとめますと接種のメリット
①感染したときの発熱・倦怠感など症状が軽くなる、重症・死亡者数(脳炎脳症、心筋炎、多系統炎症性症候群)を減らすことができる、2回目の感染予防効果が高い。
②マスクを外せる日が早くなる。コロナが無くならない可能性が高く、このまま子どもがマスクを今後数年間も続けることのデメリット(表情を読む力が育ちにくい、交友関係などの構築がしにくいなど)も考慮しましょう。
③マスクを外す生活をしたときには、特殊な強い免疫を持っている方以外の多くの方は、1度は感染することになる可能性が高いこと。その時の心筋炎等のリスクとワクチンでの心筋炎等のリスクを比較した場合、感染した場合のリスクの方が明らかに高いこと。
④追加接種(3回目)が接種できる。オミクロン株になり、接種後時間経過とともに予防効果は減衰することが示されておりますが、3回目のブースター接種(効果が下がっているときに追加で接種を行うことで効果が高く、長続きする)を行うことで、重症化予防効果が維持されやすくなります。ブースター接種が最も重要であることは他のワクチンでも間隔をあけて接種していることと同様です。
デメリット
①発熱がおおよそ1割程度(2回目でも)。肩の痛み。心筋炎のリスク(感染時や成人よりは低い)
以上から日本小児科学会はメリットがデメリットを大きく上回るとして、接種を推奨すると声明を出しました(2022年8月)。
2022年10月からは小児の3回目接種(2回目接種から5か月以上あいている方が対象)が始まります。1-2回目の接種は9月で一旦終了となりますが、3回目接種とともに再開される可能性もありますので、情報を得て接種をぜひ検討してください。